事故に出くわした看護師の心のうち

仕事

 昨年、出勤する際に道路で倒れている人と遭遇しました。

ドラマだと、飛び出ていってかっこよく状況判断をして指示を出すんでしょうね。

生死を分けるような状態の人に、物品がない中で処置をしたり。

実際はそんなかっこいいことはもちろんできませんし、できることも少なかったです。

今回の件を反省も含めて振り返ります。

個人情報もありますから少し脚色しますね。

出勤途中で事故と遭遇

 朝、車で出勤しているときは、駅まで送っていくために子どもも一緒です。

家を出て5分ほど走らせたところに右往左往している大人が見えました。

女性と男性です。

まだ大通りに出ていないので中央線もないような片側一車線の狭い道路。

いつもと違う雰囲気だと思いましたが、近づくにつれそれが事故現場であるとはっきりわかりました。

道路の真ん中で横たわっている人がいるのです。

まだ事故が起こったばかりなのでしょう、そのままの場所では車に轢かれてしまいます。

ここで最初の葛藤と戦います。

をんわ
をんわ

どうしよう・・・。ここで対応していたら子どもの電車に間に合わなくなるかもしれない。

遅刻になってしまう。

ただでさえ、今日はちょっと遅く出たから少しの時間のロスがつらい。

という迷いと

をんわ
をんわ

私が出ていったところで何もできなかったらどうしよう。

ただの野次馬じゃん。

という無力感です。

しかし、倒れている人はピクリとも動きません。

きっと助けようとして走り回っている人は困ってる・・・。

そしてちょっと車を止めて考えること5秒ほど。

口から出たのは

をんわ
をんわ

ゴメン、ちょっと行ってくる。

今日、学校遅刻してもいい?

という決心を言葉に変えたものでした。

もちろん子どもはいいよと言いました。

現場に駆け付ける

車を脇道に寄せて停車させたら、駆け足で現場に向かいます。

「大丈夫ですか。」

と声を掛けると、倒れた人のそばにいた男性が

「車を避けた時に(自転車から)転んで倒れたんです。動かないし、呼んでも寝てるし・・・。救急車がまだ来なくて。」

と、青ざめた表情で答えます。

倒れている人を見ると目は閉じており確かに何も反応がありません。

発語も手足の動きも表情も無くて寝ている感じです。

写真はイメージです。

行ったことはいつも職場でやっていること

病院でも急変時に最初に確認するのは

意識・呼吸・循環です。

私はまず大きな声で呼びかけました。

「大丈夫ですか。」

まぁまぁ強めに肩をたたきながら聞きましたが目が開きません。

次に循環を確かめます。

頸動脈を確認するとしっかり触れます。

橈骨動脈もしっかり触れました。

収縮期血圧は80mmHgあることが分かります。

集中して観察すると、呼吸もしており、いびきもありません。

呼吸も脈もリズムは乱れていません。

をんわ
をんわ

頭から血が出ているけれど、今はほとんど出てきている感じがない。

意識状態が悪いのは頭部外傷のせいだろうな。

でも心臓マッサージと人工呼吸は必要なさそう、よかった。

「(命は)大丈夫そうですよ。」

私を見てじっと待っていた男性と女性に声を掛けました。

ちょっとホッとしたところで倒れていた人の目が開いたのです。

目の位置も偏位はありません。

「あれ」

と、声も出ました。

起き上がろうとするので

「頭から血が出ていますので、今はこのままでいてください。」

と、声を掛けるとそばにいた女性が

「でもここ道路だからこのままでは・・・。」

と、心配しています。

車が少ない通りですが先ほども一台、車が迂回しているのを見ました。

をんわ
をんわ

確かに、ここは危ないなぁ・・・。

いつもは患者さんをバスタオルで持ち上げてるっけ。

周りを見渡して、しっかりしていそうな布を探します。

そこで女性がエプロンをしているのが目についたので

「移動しましょう、そのエプロン貸してください。」

と、エプロンを外してもらって倒れていた人の下に敷きました。

もちろん、声掛けをして側臥位にして半分ずつです。

そしてエプロンを担架にしてみんなで安全な場所まで搬送しました。

もちろん、いつもの「つりますよ、いち、に、さん!」は大きな声ではっきりと発声してました(職業病)。

そのあと女性は出血部を気にかけて、持っていたタオルで圧迫止血をしてくれました。

男性は車から毛布をとってきて、倒れていた人に掛けていました。

そうしていると遠くで救急車の音が小さく聞こえてきます。

その音で我に返り

「すみません、行きますね。」

と、離れました。

通勤途中だったことを思い出したのです。

夢中でした。

車に戻って反省会

 車に戻ると、あーすればよかった、こうすればよかった・・・と反省の念が押し寄せます。

まず、迷わずに救命に向かえなかった自分に対して、迷わなかったらよかったな、ということ。

大丈夫ですよ、という声掛けに何に対して大丈夫なのか伝えなかったこと。

頭をあまり動かさないようにと伝えるべきだったか。

あの処置であっていたのか、ベストだったのか。

温かい声掛けが不足していたということ。・・・などなど。

救急対応後のアドレナリンが出ている状態です。

それも自分に言い聞かせて落ち着いて運転しなくちゃと、とにかく考えないようにして何とか職場に着きました。

その日は職場に着く前から、仕事モードでした。

急変時に一番大切なこと

 新人の頃は急変に遭遇すると焦りで慌てていた自分を思い出します。

状況も判断できず、無駄な動きが多かったです。

今回は間違いなく冷静で、看護師の自分がいました。

これって、本当に大事なんですよ。

病院で遭遇する急変時の対応がその精神を育ててくれていたんだなぁ、と感じました。

今回は病院ではないので何ができて、何ができないのか、その中で看護師としてどう動くべきか。

考えるより体が勝手に反応していました。

ただやはり反省するのは安心できるような声掛けの不足です。

できないことばかりであるなら、もっと寄り添うべきでした。

後日談

実は後日、倒れていた人が同じ場所で自転車を走らせていた姿を見ました。

後遺症もなく、元気に日常生活に戻れたことを確認できたことで自分の中でもやっと区切りが付きました。

あと、その日の子どもの学校は電車は1本遅れましたが、走って遅刻はまぬがれました。

私はやはり日々実践と反省を繰り返し、学びをいただきながら今日も現場で頑張っています。

以上です。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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