いつか亡くなる家族との付き合いで絶対に外せない確認事項【元気なうちに話し合っておきたいこと】

仕事

 病院で働いているからなのですが、家族が患者さんのことで心底困っている姿を見ることは珍しくありません。

出産・病気・療養・死、これらが日常生活から切り離されている人からすればすべてが戸惑いの材料なのです。

そこで、できたら元気なうちに確認しておいてほしい死にまつわる事柄を現場からお伝えします。

これは元気なうちから必要な確認事項なので、年老いてからとか、病気になってからとか待つ必要はありません。

では、書いていきます。

臓器提供の希望

 私の友人で、臓器提供を希望している人を知っています。

臓器提供ができるのも年齢制限があります。

ドナーカードがあるので、希望される方は携帯したり家族や身近な人に話しておく必要があります。

延命治療はどこまで行うか

 延命治療は何歳で、どの病状でのどの時点で、などのように状況によって選択肢が変わってくると思います。

そのため、日々機会を見つけては話し合う必要があります。

病気が見つかってからだとか、体がかなり弱ってからだと、なかなか話しづらくなるようです。

この話題を日常生活の中に取り込むために、最初は元気なうちに、現実味がない頃から話し合いができたら理想です。

状態が悪いときに入院すると、医師から現在の病状、できる治療、予後、見通し、など次々と説明を受け

「どうしますか」

と、質問されます。

本人が答えられるなら、それでいいのです。

本人が決められない状況の時には、元気な時に話し合った内容が良い判断基準になります。

このようなときに医療者が見ていて一番つらく思うのは、家族と本人の希望が一致していないときです。

具体的に話し合っておきたい内容は次の通りです。

食べられなくなってきたとき、管で栄養を投与するかどうか

 抗がん剤での治療など、副作用の症状で一時的に食事量が急激に減ってしまって体力が落ちるときがあります。

このようなときには、体力を取り戻すために栄養を管で投与する方法も選択肢に入れていいと思います。

経管栄養で体力を取り戻して再び口から食べられるようになる人もいます。

それでも、元気になった先につらい治療が待っているなら、と経管栄養を希望されない患者さんもいます。

管で栄養を入れても意識の回復が見込めない、栄養を入れてもすべて下痢になって出てくる、肺炎の原因になっている、などであれば後悔することもあるかもしれません。

また、状態が落ち着けば在宅療養の可能性も出てきますので、家族の協力が必要になり、そこで初めて慌てる人もいます。

心臓マッサージを行うかどうか

 心臓マッサージを行う状況の時って、もちろん本人は意識はありません。

医療者は、心臓マッサージ拒否の意志が確認できていない以上、心停止した人に心臓マッサージを行います。

肋骨が折れてバキバキになる可能性もあります。

でも、しないといけないんです。

それで息を吹き返して社会復帰する人もいますので。

問題は、心臓マッサージをしてもその後の人生が長くならないと予想される人です。

苦しい時間がただ、延びるだけだと分かっているとき。

がん患者さんの末期の方ですとか、超ご高齢の方です。

心臓マッサージを機械で行うこともできるんですが、あまり知られていません。

ガシャン、ガシャンと、無機的な機械音が繰り返しあなたの愛する家族の胸を押し続けます。

延命治療を行いながら、医療者は

「本人のために早くやめてあげてほしい。」

と、心の中で願っていることも多いです。

人工呼吸器をつけるかどうか

 呼吸ができない患者さんには人工呼吸器があります。

強制的に肺に空気を送る器械です。

人工呼吸器をつけることによって回復する疾患はたくさんあり、回復するなら迷わず使用するべきです。

これも、使用するかどうかはしっかりと医師と話し合う必要があります。

使うことによって、本人の苦痛が増えるだけで苦しい時間がただ延びるだけならば使用しない選択もあります。

器械に呼吸を任せるので、眠らせないと苦しくなってしまう場合も多々あります。

がん患者さんで呼吸が苦しいのであれば、苦しい時間が減るように薬を使ってもらう選択もあります。

様々なパターンを見てきた医師に相談し、本人が一番苦しくない選択ができるよう一緒に考えられるといいです。

点滴はどこまで行うか

 食べられなくなっても脱水予防に点滴だけは希望されるご家族は多いです。

たぶん、私も自分の家族には希望すると思います。

ただし、その点滴のおかげで死期を早めることもあることを覚えておいてほしいです。

水を体に入れるということは、出さないと体にたまってしまいます。

循環動態や腎臓が弱っているお年寄りに強制的に水を入れたとき、排泄できないこともあります。

出口のない水は手や足をむくませ、ひどいと皮膚から体液がしたたり、こぼれてくるのです。

手や足からしみ出てくるだけならいいのですが、肺に水がたまると痰が出始めます。

痰を出す力がなければ、肺炎になったり、痰が詰まって窒息で亡くなることもあります。

心臓に水がたまれば、心不全になって呼吸が苦しくなり脈が乱れ心停止することもあります。

看護師はこれらに注意して医師に報告しますが、家族の強い希望があると点滴をやめることができません。

どのように死を迎えたいか

 ちいさな子どもですら、死を考えて眠れなくなる日があります。

自分が死ぬときは、と考えたことがない人は少ないのではないでしょうか。

実際にこの話題を出した時、思っていた内容とは違う答えが返ってくることもあります。

私の場合で言うと、年老いて死ぬなら、できたら一人で死にたいです。

家族に囲まれるとか別に望んでいません。

ただ、死が近いと分かったときには、話せるうちに家族の顔を見てお礼を言いたい、それだけです。

あと、痛みとかの苦痛はできるだけ取ってほしいです。

そういえば、急に亡くなられた方の家族が

「暗所番号や預金のありかが全く分からず、とても困っています。」

と、つらそうに話していたので、日ごろからそれらを整理するようにしています。

結論

 とにかく繰り返し言いたいのですが、元気なうちに機会を見つけて少しでも話し合っておいてほしいのです。

年齢も性別も職業も関係ありません。

生きているうちは誰でも生・死について意思表示しておいてほしいのです。

現在、決断の必要に迫られ分からなくて困っているなら、信頼できる数名の医療者にこう質問してください。

「あなたなら、自分や家族が同じ状況になったときにどうされますか。」

もしかしたら、自分にとってしっくりくる答えが返ってくるかもしれません。

今後もこの項目に関しては書き足していくつもりです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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